[百囀」
大石悦子句集「百囀」を読んだ。
私の高校・大学の友人の会社の同僚の奥さんとのこと、すなわちほぼ同世代。
手元にある名句集の類いの本を見ても大石悦子の句は実に沢山採用されている。どれも素晴らしい句ばかりだ。
経歴を見ると16歳から作句をしているようで、キャリアから来る巧みさを感じる。弱者への応援歌(福田甲子雄)もある。
特徴は言葉の豊富さにある。
今回句集の題名の「百囀」は自分の造語らしい。今回も分からないで字引を引いた字が多かった。負喧(ふけん)、滑莧(すべりひゆ)は季語だから知らない方が悪いかも知らないが、誄(るい、しのびごと)、潺潺(せんせん)、魑魅(すだま)、靉靆(あいたい)などなど。ほかの言葉では表せない格調がでることは確かだが。
「百囀」ではいいと思った句は357句中52句と少なかった。日頃はあまりいいと思わない小川軽舟の「朝晩」が360句中86句良かったのに比べて少ない。
言葉の技巧によっているのに閉口したかも知れない。
兄、妹と亡くなられたことに加えて、知り合いの追悼句が多かった。
いいと思った句を五つ。
女正月鯛の目玉を執念く吸ひ
負喧してうまうま老いぬわれながら
鯉老いて春の野川の真中ゆく
海を見に行つたきりなる秋の蝶
本売つて知性おとろふ滑莧
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