2020年3月28日(土)
日限り日記

 
 [御社のチャラ男]
 絲山秋子「御社のチャラ男」を読んだ。
 絲山秋子は初めてだと思う。「妻の超然」「夢も見ずに眠った」など評判が良かったので読もうと思ったが、読めなかった。今回読んだのは「妻の・・・」「夢も・・・」を読まなかったからである。もう少し言うと現代小説で面白いと言われている小説を読んで、面白さを実感したかったからである。
 結果は。地方の小さな会社の人間模様が実に巧みに描かれているとは思ったが、それほど面白くなかった。おそらく本の選択が良くなかった。私にもいろいろな面があるが、チャラ男という面は多分一番少ない面かも。実際に自分が小説の登場人物になりえないとき、人はその小説を面白いとは思えないかも知れない。小説のチャラ男が最後に業務上横領に走ったとき、一片の同情も涌かなかった。
 日本の小型現代小説を読むのはあきらめたと言いたいがなにまた読むでしょうね。今日も文芸雑誌に田中慎弥の小説が紹介されているのを見て食指が動いているから。
 昔好きだった辻原登の新作も発表されているが、直接彼と話をしたとき自分がチャラ男になってしまったことを思い出して、しばし敬遠。
 
 
 思ひ切りなきグレーの髪や茅花(つばな)
 
 
 
 

2020年3月26日(木)
日限り日記

 [ニュースキャスター]
 オリンピック開催が一年延期された。
 24日夜九時すぎに総理の表明があったが、そのとき何局かテレビで生のニュース解説番組を見ていたので放送局の生の反応を目の当たりにすることができた。
 このときキャスターや解説者、コメンテーターなるもののとっさの反応を垣間見た。
 延期表明までは、世界にコロナウイルス感染が広がっている現状ではこのままオリンピック開催は問題であるという論調だった彼らは、いざ延期決定となると、とたんに延期するとこのような問題があると難しい顔をして並べ立てる。
 キャスターやコメンテーターは問題を並べ立てるのが商売らしく、延期して良かったのか悪かったのかという自分の判断を明確にして論じることはしない。これでは大勢の意見の赴く方に乗ったり、結果が良かった方に着くという日和見者であるだけである。なぜしないかと言えば、彼らは批判にはたけているが自分の考えを決めることは出来ないらしい。あるいは決めると損をすると思っているのか。
 民放のバラエティー番組みたいに視聴者の受けを狙っているニュースショー番組ならともかく、NHK9時のキャスターのしたり顔にはうんざりさせられた。あなたの並べ立てる問題は特段目新しい指摘ではないのです、それよりもあなたの意見はないのですか。あなたは決定することが怖くて出来ないのではないのですか。
 
 
 息合はせ花の宇宙と結ばれん
 
 
 
 

2020年3月25日(水)
日限り日記

 [紙上句会]
 7名による大学クラスメートの句会が、コロナウイルス騒ぎで紙上句会に形を変えることになった。
 メールで投句して句を幹事が整理し各人に配って選句させ発表する、という一般的なネット句会もあり得たが、面倒でもあるし、得票を得んがための句も散見させられるので、この際思い切って選句を止めて意欲的な句を作り合おうという提案がありそのようになった。投句は一覧表にして配布して終わりとする。言いたいことがあればそのあと自由に意見を言い合う。
 さて実際に結果が配布されてきたが、これだけでは何かパンチ力に欠ける。句会メンバーはこの句会だけに句を作る者から、句暦二十年になる者までいろいろで、いつも選句の結果はばらばらであるが、それでも各人なりに真剣に考えで句を選ぶ。それがないのは、心は落ち着くがときめき感もなくなる。
 点取りを狙った句がなくなって冒険的な句が増えたかどうか、はっきりとは分からない。点を取ってやろうという気持ちも一概に悪いとは言えないだろう。
 句会は皆で集まることに良さがあるが、集まれないとき今後ともこの方式で行くかどうかはメンバーの考え次第だ。
 
 
 サクラサクラ紙上花見を二人して
 
 
 
 
 

2020年3月23日(月)
日限り日記

 [労災病院の場合]
 横浜労災病院に薬の処方箋をもらいに行く予定だが、コロナウイルス感染予防のためこれを郵送して貰えないか電話で交渉。
 結果は先生が窓口に出て体調は変わりはないかと電話診察。処方箋はファックスで薬局に送ってくれる。支払いは次回6月来院のときでいい、処方箋の本書は病院から薬局に直送すると有り難い決定。
 薬は薬局から宅急便で送ってもらうことは薬局の了解済み。
 これで病院へも薬局へも行かないで済んだ。
 さすが準国営病院。
 私立の小さなクリニックでは保険証を持って支払いに来いとか、処方箋原本は取りに来いと言ってうまく行かないのだったが。
 もっとも今病院は患者が来なくて経営が苦しくなっている個人病院が多いとのこと。国民皆保険で1割で診療が受けられるからかからなくてもいい患者を呼び込んでいたのかも知れない。医療に限らず社会全体が必要度の低い需要に膨れ上がっているのかも知れない。
 身の丈に合った生活から膨張させた原因は、将来にツケを回すつけ社会、すなわち国債の乱発による経済の膨張だ。国債が自国民で消化されているかぎり、国が破綻することはないという学者もいるが、実力以上に膨れ上がり架空の社会を謳歌している国民には、必ず報いが来る。
 今回のコロナウイルスによる縮小経済が、その教えである。我々は現実の社会に生きなければならない。
 人気投票(=デモクラシー)政治の最大の欠点は、借金をしてでも(将来の人を犠牲にしてでも)今の生活を良くしたという人々の欲望に歯止めがかからないことだ。
 
 
 花万朶鳥の言葉の溢れ出づ
 
 
 
 
 

2020年3月21日(土)
日限り日記

 [ゴルフ会員権顛末]
 某ゴルフクラブが民事再生手続きの承認を受ける前は再生室から再建案に賛成してくれと何度か熱心な案内があったが、今回なんの連絡もなく1万円が振り込まれた。
 つまりこれでこのゴルフクラブの民事再生手続きは完了したということなのだろう。
 会員権は100万円だったから初回会員は99万円を放棄させられたことになる。僕の場合は15万円で入ったから14万円の損失であるが、何人かで99万円の損失を分担したわけである。
 ゴルフ場再生事業がビジネスになっているというのは、放棄させられる権利が実に大きく、新しい経営者は安い買い物で事業を始められるということであろう。一般の会社であれば新しい会社は銀行から金を借りて再出発せねばならず、そのためには銀行すなわち大債権者の納得のいく債務切り捨て案でなければならない。ゴルフ場の場合は緩いように思われる。
 債権者すなわち会員権保有者は泣き寝入りしかない。再建計画に反対すれば一銭も返ってこないから賛成せざるを得ない。こんなうまい商売はない。
 ネットで見るとこのゴルフ場は名前を変えてすでに再出発しているようだ。
 仮に国だとしたらどうだろう。国債償還が出来なくなって破産して再出発するのか。いま為政者がいい顔をして大盤振る舞いをしている原資は国債すなわち借金である。災害時の救済などには当然であるが、財政が恒常的にかくも大きな国債に依存していることは到底いい気持ちにはなれない。

 
 
 囀りや富士の裾野に日本国
 
 
 
 
 

2020年3月19日(木)
日限り日記

 [不審な電話]
 妻のスマホに知らない電話番号の着信が繰り返しあり。出なかったが発信元はネットで調べたらM銀行町田支店らしい。昨日M銀行横浜支店から税金を送金したばかりなので、銀行内で情報が漏れたのかと胸騒ぎがする。何かトラブルが起こってうまく税務署に納税されなかったのではないかとヒヤッとした。
 
 横浜支店に頼んで町田支店から我が家に電話をさせ、町田支店から妻に発信したかどうかを調べてもらった。銀行には行員の電話発信記録が残っているとのこと。その結果間違いなく町田支店から発信されたこと、顧客が間違って妻の電話番号を自分の番号として支店に届けたので担当者がその電話番号に掛けてしまったとのことだった。
 そうと分かれば悪質な電話ではなさそうだ、気持ちは悪いが。
 町田支店には顧客に銀行に届け出た電話番号の訂正をしてもらいその結果を連絡してくれるよう頼んだ。
 念のためドコモにも間違って電話番号を使われたのだから、ドコモからも顧客に訂正を要求して欲しいと頼んだ。しかしドコモは、銀行と顧客の問題でドコモは関与できないとの返事。
 すっかり驚かされたので怒りが収まらなかったが、そういうことならとしぶしぶ納得した。
 あとから思うに、M銀行町田支店の担当者が番号を押し間違えて電話をしたという方が辻褄が合いそうだ。古くからの顧客が間違った番号を届けたのなら、もっと早くに間違いが分かったはずだからだ。それとも新規の得意先で行員は今日初めて電話をしたということなのか。
 かかってきた電話番号がM銀行町田支店のものらしいと分かったことでこの問題は解決した。ネットの情報は怖いこともあるが助けられることもある。なにはともあれ悪質な事件でなくてよかった。
 
 
 梅子さんから梅子句集や梅の香も
 
 
 
 

2020年3月17日(火)
日限り日記

 [e-tax考]
 所得税の確定申告は2011年からe-taxでやっている。慣れるまでは大変だったが今では少し気を遣うのは医療費控除とNPOへの寄付ぐらいだ。しかも医療費控除は医療費を支払った都度医療費集計フォームに入力しておけばあとは瞬時にe-taxが取り入れて計算してくれるので全く手間がかからない。今ではe-taxなしの確定申告は考えられない。入力と電子送信・電子納税で30分もあれば終わる。
 今年は、ごく少額ではあるが妻に不動産所得と土地の譲渡所得があった。それ自体はごく単純のものだが、姉弟三人が共有しているというのでなかなか厄介だった。財産は共有だと何かと面倒だと言われているが、妻たちの場合は、お互いに考えが違うというような面倒はない。そうではなくて、事務の進め方に各人の持って生まれたペースがあるのが厄介なのである。いついつまでにと時間を決めても早ければ早いほど良いという考えの人と、何も1日を争わなくても良いのではという考えの人がいると、双方にストレスがたまってしまう。これは避けがたいことだが。
 今回は年金、不動産所得、不動産譲渡所得の確定申告を自分でe-taxを使ってやる人、税理士に頼む人、コロナウイルス騒ぎで締め切りが延びたのでゆっくりやる人に分かれた。連絡をよくするためにLINEを組んで、1日1回は見ようと申し合わせをしたが、1日何回も見る人と何日も見ない人が出てくる。
 妻はパソコンがうまく出来ないので手書きでやれば良いのだがこれはこれで大変だ。そこでe-taxでやるように僕が助けた。僕はせっかちだからほかの二人(妻を含めて三人)のスピードに合わないというかペースを乱した。
 不動産所得や譲渡所得とか慣れない申告でもありストレスの貯まる1ヶ月だったが無事電子送信、納税をしてたちまちストレスフリーになって今日は妻と少し高めの食事をした。
 まあ、e-taxは共有の処理などまだまだ不備なところもあるが、年々しっかりしたシステムになってきている。来年はもっとうまくe-taxをこなしたいと、この種のシステムの持つ挑戦心をくすぐる魔術に引っかかっている。
 
  確定申告日42階レストラン
 
 
 
 

2020年3月13日(金)
日限り日記

 [感染リスク]
 代議士の河野洋平が息子の太郎から肝臓の臓器移植の提供を受けたと知って、私は違和感を持った。親から子に臓器を提供するのは当然だが、その逆に親が将来のある子から受けるとは。まあ個々の家庭ことは他人がとやかく言うことではないが。
 コロナウイルスの感染が重症化するのは老人が多い。我が家でも子どもが私に代わって私の薬を受け取りに病院に行ってあげると言ってきた。最初はありがたく申し出を受け入れたが、この申し出を受け入れるのは河野親を批判したことにもとるかも知れないと思い直した。重症化しないとは言え感染リスクは若い人にもある。感染したら子どもには幼い子どもがいるし、仕事もあるので大変な負担になる。
 申し出をしてくれたことは嬉しいが、薬を取りには老い先の短い私が行くべきだ、と思い直した。
 
 
  山鬼の舐めて艶増す山椿
 
 
 
 

2020年3月11日(水)
日限り日記

 [病院の待合室]
 今回のコロナウイルス感染防止で病院待合室が感染源になるのではないかという問題が出てきた。病院によってはいろいろ対応をしているという報道がある。
 私の通っている病院に早速電話で掛け合ってみた。
 「6週間毎に検診を受けているが、待合室感染がいやなので次回は診察は受けずに処方箋だけいただきたい。処方箋を私の家に送ってもらえば処方料は銀行振り込みで支払う」
 回答は、
 「処方箋のみを出すこと可能だが、処方するのは1ヶ月分に限る。処方箋は薬局にFAXで送る。ただし処方箋原本を患者宅に送るサービスはしていないので月末までに受け取りに来て欲しい。処方料金は月末までに来院の上現金で払って欲しい」
 薬局の回答:
 「処方箋はFAXでも受け付ける。薬は着払いの宅急便で患者宅に送る。月末までに処方箋の原本を郵送してください。支払いは銀行振り込み可能」
 
 結局薬局は出向かなくても済むが、病院は出向かないとだめである。診断を受けずに処方箋で薬をもらうのは1ヶ月分に限るという原則を、コロナウイルス問題が起こっても伸ばそうとしない。銀行振り込みはだめで本人か代理人が病院に支払いに行かないといけない。
 これでは病院待合室にいる時間が短縮するだけである。病院はコロナウイルスの感染よりも自分の病院の収支を心配している。
 わが家では娘が月末に病院に支払いに行ってくれることになった。
 
   新しきウイルス新しき木の芽風
 
 
 
 
 

2020年3月9日(月)
日限り日記

 [日本近代史講義14講]
 「日本近代史講義14講」を読む。
 自民党本部で行われた「歴史を学び未来を考える本部」での講義を元に作られたものだそうだ。
 実証的に、という各論は教科書的であり通読した。特に新しい情報としては、独ソ戦開戦の情報が事前にドイツから日本にもたらされたこと、A級戦犯は東条英機でさえ、死刑判決の根拠は「平和に対する罪」ではなく、「捕虜および抑留者の野蛮な行為」であったことなどである。「平和に対する罪」は第二次大戦中に出来た事後法であったばかりでなく、勝者の立場に立った裁きになりすぎるからである。死刑にすることの当否は別として、死刑にすることがすでに決まっていてあとは辻褄合わせだったのだとすれば国際法とこれに基づく裁判とかはじつにあやふやなものだ。
 
 令和から見た日本近現代史」(山内昌之)と第13章の「ポスト平成に向けた歴史観の問題」(中西寛)は再読、精読してみた。
 山内昌之によれば、70年や100年という時間区分は見る立場が違えば過去にこだわり続けるのか、未来を見つめることで歴史を止揚するのか、視角の違いで評価の論点が違ってくる。この例は日中、日韓に限らず世界中至る所にある。
 日本の歴史では、徳川家康。分裂していた日本に平和と安定を回復し、270ほどある藩を統一した幕藩制複合国家にまとめ上げた。戦争と平和と外交の全局で、慎重さと大胆さ、知識欲と独創性を失わない家康は、統治者としてカエサルやナポレオンよりも成功を収めた。
 この江戸時代があったからこそ明治の近代化があり得た。
 
 中西寛は今の日本人の歴史観は司馬遼太郎史観、つまり明治以降の日本を西洋近代秩序を吸収した成功例と捉え、1931年の満州事変から太平洋戦争を逸脱期として捉えるのが一般的だが、果たしてそれでいいのかと問題提起している。
 森鴎外は日本の近代化の急速さと裏腹の底の浅さを「普請中」だと皮肉った。また司馬遼太郎は今の日本語の書き言葉を作ったのは漱石だと言っているとしたうえで、中西は、明治から昭和にかけての成功体験に安住することなく、新しい歴史観と新しい表現力を構築することが期待されていると言っている。
 特に目新しい論ではないが同感である。それにしても政治家、学者、経営者、作家などに時代を切り開いていく人材が見当たらない。必要になれば必ず現れるものかも知れないが。
 
  新しき職人二人草餅屋



  

 

2020年3月5日(木)
日限り日記

 [スマホの裏蓋]
 スマホの裏蓋の接着が剥がれてしまった。1センチぐらい浮いて詰め込まれていた部品が解けてしまいとても押し込むことはできない。
 2年4ヶ月使っただけで蓋が剥がれるとはお粗末な製品だ。ドコモの保証期間は1年である。
 このまま電源が入らなくなったら大変なので、いそいでバックアップを取ったが、さてどうしたものか。ネットで調べると、修理には2週間かかり金額は不明。修理に出すとき初期化しなければならないとあるのが面倒だ。返ってきたときに一からアプリやデータを入れ直さなければならない。
 それなら新調した方がましかも知れない。
 今代えるとしたら、手書き入力の出来るGALAXY NOTEか、軽いAQUOS ZETA2。いずれにしても8万円から10万円出費。手書きが出来るという使ったことのない機能を持っているのでGALAXYに惹かれるが、今回裏蓋の剥がれた会社なので心が向かない。
 しかもいま通信は速度が4Gから 5Gに換わろうとしているから、今年中に5Gに対応したスマホが出てくるだろう。
 などなどいくつかの選択肢を前にうろうろする。
 さらに、今は新型コロナウイルス肺炎の罹患予防のため、外出は控えた方が良さそうだ。
 買い換えのために外出することはまかり成らぬという妻のお達しで本件は落着。魅力のあるスマホがコロナウイルス騒ぎが済んだ頃出て来ると信じて、このまま今のスマホを、臓物が飛び出たままで使い続けることにした。
 
 スマホが壊れてあたふたしているときに妻から確定申告の質問があり、思わず五月蠅いと言ってしまったことを深く反省。一旦緩急のときに弱い。
 こんなことで正常心をなくすなど愚かなことだ。自分の頭こそ故障している。
 
 
 スマホ壊れて頭壊れぬ春の雷
 
 

2020年3月3日(火)
日限り日記

 [君が異端だった頃]
 新型コロナウイルス感染の恐れから人のいるところに出るのはいやなので、家でいるとなれば読書しかない。
 今年読売文学賞取った島田雅彦「君が異端だった頃」が賞の紹介で面白そうだったので読んでみた。島田雅彦というのは僅かに名前を知っているぐらいで読んだことはない。
 帯には「最後の文士島田雅彦による自伝的青春私小説」とある。最後の文士とは何か。「幼年期から修業時代を経て鮮烈なデビュー、文豪たちとの愛憎劇と最低男の華麗なる遍歴」というのも、なにか太宰治のことをいっているようで時代がかっている。知らない作家の自伝的小説を読んで面白いのか。
 ではなぜ読もうと思ったのかと言うことになるが、むしろ島田雅彦WHOと言うところが読もうと思った理由ではないか。
 結論としては、幼年期から小学校、中学校、高校、大学卒業あたりまでは誠に面白かった。つまり四部作の三部までは自分らしさを貫こうとするやんちゃできかん坊の少年がいる。顔がよくてどこにいても女の子の視線を受けるというのがうらやましいが。
 しかし第四部、仕事に就かずいきなり小説家になり、それ故に文壇の中を泳ぎ回るあたりは文壇の内輪の話になってくる。積極的に海外に行くなど少年時代の特徴も出ているが、中上健次との愛憎劇的なやりとりは、結局幼年期からの調子のよい男のたどる道かと思わせる。最後の文士というのはこういうことか。
 
 島田雅彦の小説を読んでみようかという気にはなれなかった。
 一体小説は進歩しているのだろうか。
   
  不機嫌な少年たりし木の芽どき
  
  
  
 
 
 

2020年3月1日(日)
日限り日記

 [愛人 アマン]
 週刊誌でマルグリット・デュラスの「愛人 アマン」が 高浜寛によって漫画化され出版されたことを知った。
 「アマン」、この強烈な小説と映画。私にとっては映画が極めて印象的だ。
 旧仏領インドシナ、現ベトナム、カンボジア、ラオスでの物語。貧乏ですさんだフランス人一家の少女と裕福な中国人青年実業との物語。
 植民地のなかの宗主国の女学校
 フランス人の少女と東洋人の青年の甘美な恋
 激しくも美しいセックスシーン
 人種差別、富の逆転(貧乏な西洋人と裕福な東洋人)
 セピア色の仏領インドシナ、メコン川
 
 これらが一体となって、魅力のある映画になっていた。
 
 漫画ではどうか。
 ネットで一部が見られるようになっているので見てみた。まあ、映画の印象を大切にしておいた方が良さそうだ。
 
 
  春眠や土の匂いのメコン川