[俳句を選ぶ]
2019年の角川俳句賞が二名に決まった。そのうちの一人が私の属している俳句結社の人で同じ句会に出ていて面識もあるので嬉しかった。
応募総数567篇から編集部が39篇を選び選考委員が決定する。その選考の過程が雑誌「俳句」に載っていた。
選考委員は、仁平勝、正木ゆう子、小澤實、岸本尚毅。この現在の俳句界の第一線にいる人たちが自分の信念のもとに真剣に選考するのだが、彼らがどういう基準で選ぶのか、選ばないのかを選考委員の発言から書き出してみる。
[選んだ理由]
(季語)
・季語の本意と自分の気持ちがかみ合っている
・季語の大胆、軽妙、うまい取り合わせ
・季語を丁寧にゆったりと詠む
(対象の見方)
・良く見届けている
・新鮮
・素直、シンプル、しなやか
・発見がある
・しっかりした見方がある
・面白いところに目を付けている
・独特の眼、独特の詠み方である
・自然の細部を見て、図太く、重たい
(詠む技術)
・省略が巧い
・俳句に類想があるのは仕方がないが、類想を巧く通り抜けてやって行く
・俳諧と描写がうまく重なっている
・のびのびと詠む
・十七音をゆったり使う
・マイナーな動詞(壊す)を生き生きと使う
・素朴で下手っぽい言葉が俳諧になっている
・説明の言葉を使いこなす
・心を込めて詠んでいる
・勢いを持って自然と向き合う
・詠み尽くされたところを巧く詠む
・矛盾が生まれているところに詩がある
・叙景でありながら叙情がある
・俳諧性がある
・押し出してくる力
・ドラマティック
・生活、見たもの、感覚と俳句が直結している
・しっかり詠んでいる
[選ばなかった理由]
(季語)
・季語が実よりも虚に傾いている(百合の角度で記帳するなど)
・季語の説明に終わっている
(見方)
・類想感
・新味がない
(表現)
・理屈っぽい
・滑っている句
・比喩を抑えた方が良い
・無理な比喩
・パターン
・言い過ぎ
・主体がなにかが曖昧である
・散文的である
・特殊な言葉を使う
・言葉で言いおおせてしまっている
(選考委員間の違いに対するお互いの考え)
・選者の価値観の違いは仕方がない
・同じところを、そこがだめという選者とそこが良いという選者がいるのも仕方がない
・拙いと思うところを評価する選者がいるのも仕方がない
・好みの問題
俳諧性、滑っている、言い過ぎているなど個々の俳句を付けないと批評の意味が分からないだろう。俳句は短いから批評の言葉も短く感覚的でそれだけでは分からないが、俳句をやっている者同士では符牒のように理解できる。俳句の世界は言葉のギャングのシンジケートのようなものと言えよう。
秋出水言葉の世界打ちのめす
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