2019年5月29日(水)
日限り日記

 [昔のジャズ]
 持っている昔のLPレコードをデジタル化してパソコンに入れるにはプレーヤーを買い換えなければならないことが分かった。ジャズのCDを調べてみたら結構昔聴いたジャズがCD化されている。
 そこでネットで「101グレーテストジャズ」というCD四枚組を買ってみた。4枚で2000円というお値打ちものである。
 ネット上の評判は収録が古いので音の良くないものもある、ということ。実際に聞いてみるとなるほど音が良くないものが多い。しかしいま持っているLPを聞いても同じようなものでしょうね。
 収録されている曲、プレーヤーは凄い。プレーヤーだけ日本語で書いてみると、ナット・キング・コール、サラ・ボーン、ルイ・アームストロング、ディヴ・ブルーベック、エラ・フィッチジェラルド、ディジー・ガレスピー、スタン・ケントン、スタン・ゲッツ、ビリー・ホリディ、チャーリー・パーカー、アート・ブレーキ―、オスカー・ピーターソンなどなど。曲は省略するが聞いた名曲ばかりで嬉しい。つまりいまから60年前ジャズは日本人の若者の中に浸透していたと言うことだ。いま若者に浸透している音楽は何なのだろう。
 じっと聞き入るには音が悪い。本を読みながらバックミュージックとして聞くのが一番良い。クラシックと違って一曲4分前後のものばかりだから拾い聴きも出来る。部屋も机も昔に戻ったようで落ち着くことが出来る。
 
 
 サッチモの声のかすれも夏初め
 
 
 
 

2019年5月26日(日)
日限り日記

 「断腸亭日乗」
 体調が悪いので俳句教室を休む。
 永井荷風の「断腸亭日乗」を読む。とりあえず荷風40歳の大正7年までを読んだ。このなかには荷風が父親から引き継いで住んでいた家「断腸亭」を売るところがある。
 「余居邸を売り路地の陋屋に隠退し将に老後の計をなさんとす。大吉の御籤を得て喜び限りなし」
 荷風らしい記述もある。
 「此妓無毛美開、閨中(けいちゅう)欷歔(ききょ)(すすり泣き)すること頗妙(はみょう)
 この日乗(日記のこと)で私が特に驚いたのは沢山の草花の記述である。草花の芽、蕾、開花、実の変化をさりげなく書く。物語よりは風景を描写する。その草花を見るために「断腸亭」の庭を手入れする。外に出ても草花や木々を見る。
 この日乗に書かれている木や草や花を列記してみる。
 臘梅、瑞香(沈丁花)、芍薬、梅、貝母、八つ手、萩、水仙、連翹、春蘭、桃花、桜花、藍菊、白粉花鳳仙、コスモス、躑躅、杜鵑花、河骨、来青花、秋海棠、無花果、枇杷、菖蒲花、錦木、虎耳草、薔薇、大山蓮華、丁字、柘榴、梅もどき、金糸梅、紫陽花、甘草花、凌霄花、百合の花、雁来紅、女郎花、紅蜀葵 、野菊、菊、木槿、葉鶏頭、芒、竜胆、紅葉などなどこれだけで45種ある。 
 日々の出来事を記す短い文章の中に、季節の花や草が書かれている。文章の調べも良い。俳句のような日記と言えようか。
 
 
 色町や真昼しづかに猫の恋   荷風
 
 
 
 

2019年5月23日(木)
日限り日記

 [杞憂病]
 最近は法務省や裁判所からの手紙はあまり驚かないようになってきた。書いてある住所の「東京都千代田区霞が関****」をネットで検索すると、「法務省の名称を不正に使用した架空請求に使われる法務省の住所」と出てくるぐらい詐欺グループの使う住所として有名になっている。
 しかしこの前妻宛に来たのは正式な税務署からの封書であった。今年妻は事情があって私の扶養親族から離れて独立して確定申告書を提出した。結構難しくて実際何度か税理士事務所に相談に行ったがその都度私がついて行き、ついには私が妻に代わっていろいろ調べて提出書類を書くはめになった。
 税務署からの封書となれば、きっとその妻の確定申告関係の問い合わせに違いない、あるいは出頭命令かも知れない、と思った途端に動悸がしてきた。妻は分からないから自分が行かなければならない、覚えているかななどなど。
 妻に封書を見せたところ、なにそれ開けてみたら、というご宣託である。恐る恐る開けてみたら、税務署主催の記帳説明会の案内パンフレットが入っていた。
 やれやれ、良かったとへなへなと机に座ったら妻が、開けてみてからドキドキすれば良いのに、と言う。
 言われなくてもその通りだが、出来ない。いわば杞憂が習い性となっている。損な一生だが今更直すことも出来ない。
 
 
 筍に突き破られし三畳間
 
 
 
 
 
 

2019年5月19日(日)
日限り日記

 [ドコモ新料金」
 今回のドコモ料金体系の変更は、これから契約をする人にはシンプルになったのかも知れないが、今までの契約との関係ではなかなかシンプルとは行かなくなった。ドコモインフォメーションセンターは新旧どちらが得かという質問に、今までは一緒になって考えてくれたが、今回は自分で判断してくださいと言うようになった。考えようによっては簡単に回答できなくなったとも言える。
 特に固定の機種ならば永久に料金を割引するとして始まったdocomo withは、6月からは新規契約が出来なくなり早くも朝令暮改である。初めから機種割引を月々の利用料金から永久に行う制度について疑問があったがやはり無理な制度だった。総務省のお達しがあったからではなく、一見新しくはあっても無定見なものはやはり続かないということだろう。docomo withの機種は増えて8機種ぐらいある。ドコモについてきたスマートフォンメーカーはリスクをかぶったのではないか。
 今回不思議なのは「スマホお返しプログラム」。36回分割払いをしている人には24回分を支払えばあとの12ヶ月分は「返される」という。こんなのほかの商品でありますか。あの手この手でユーザーの買い換えを促進しているが少し乱暴ではないか。一括払いの人には適用されないというが、そのうち改訂されると思う。
 長く使えと言ってみたり早く買い換えろと言ってみたり、多正面戦略ではあるが場当たり小出し戦略でもある。多様化する市場のニーズにうろうろと付き従うだけで、市場に影響を与えようという考えはとらないことにしたのか。恥も外聞もなくアホになれるかどうかこそが大会社の命であるとでも言うかのように。
 
 
  清濁をこなして太き鯉のぼり
  
  
  
  
 

2019年5月16日(木)
日限り日記

 [ジャンパーを買ってしまう]
 銀行へ。最近この銀行からは経費節減のためということで残高通知が来なくなった。この銀行のATMはゆうちょ銀行のATMを利用しているが、記帳は出来ないので残高を知るためには銀行の窓口に出向いて記帳してもらう必要がある。ゆうちょ銀行のATMで引き出し以外に記帳をするようにするには、膨大な費用が掛かるのだ。
 一度倒産した銀行だけにコストをかけないことに注力しているからこそ今の低金利時代に競争できるのだと言う。
 新聞によればみずほ銀行は500ある支店を370にするとのこと。
 なにやら暗い時代の始まりのような予感がする。
 
 帰りに百貨店で夏物の洋服を見て回る。
 よく行くブランドの店に行ってジャンパーを見ていたら店員に捕まって話をする羽目になってしまった。というかこちらが最近のファッションについて話を聞きたがっているとみられたに違いない。クールビズの影響でネクタイはもちろん紳士服は全く不調だとのことで店員はカモを探している。
 話の果てにジャンパーを買わされてしまった。緊急性のないもので、ボケて籠絡されてしまったとしか思えないがこちらに十分隙があった。詐欺電話には引っかからないと思っているが、話の巧い店員には引き込まれてしまう老人の一人であると思わざるを得ない。
 
 金色の屏風の宇宙杜若(かきつばた)
 
 
 
 
 

2019年5月12日(日)
日限り日記

 [元徴用工問題の解決]
 韓国の裁判所が元徴用工に日本の企業は賠償金を支払えという判決を出した。日本政府はこの問題はすでに1965年の日韓請求権協定で解決済みなので後は韓国政府が解決すべきであると主張し、国と国で話し合おうと提案しているが韓国政府は無視している。
 もし賠償判決を執行するために韓国にある日本企業の資産が強制的に売却されたらどうなるか。
 政府は可能なあらゆる対抗策を講じると言っているが、新聞もテレビも有効策を見つけられないでいる。日本にある韓国企業の資産の差し押さえ、貿易制限、入出国制限、国交断絶など勇ましい議論があるが、どれもうまくいくとは思えない。日本の利益にならないばかりでなく損害もでる。
 例えばキムチの輸入制限などは問題が波及しないから良いのではないかなどの無責任な意見も出てくる有様だ。
 難しいなと思っていたところ今週のニューズウイークにこんな記事が出ていた。
 「例えば鉄鋼大手のポコスなど、日韓請求権協定に基づき、日本政府から賠償金を受け取っている韓国企業に賠償の一部を負担させる方法もあるだろう」(ニュースウイーク日本版5月14日号J・バークシャー・ミラー)
 なるほど、請求権協定の賠償金はそのように使われていたのか。韓国政府の懐に入っているのなら政府が負担すべきと思っていたが、企業に支給されていたなら企業に負担させることも合理的だろう。
 ニューズウイークは同時に、日本の企業も元徴用工に対して賠償金でなく自発的な支援金を払うべきだとも述べているが、うまくいかなかった「元従軍慰安婦問題」の解決策の二の舞になる可能性が十分にある案で反対である。
 いずれにしてもこのように実務的、具体的に解決策を探すべきだ。それは両政府にとっても有意義なのではないか。
 
 
  40年花の命や庭のリラ
 
 
 
 
 

2019年5月10日(金)
日限り日記

 [テレビの画質]
 4Kテレビを視聴するに必要というので、CATVの回線を同軸ケーブルから光ケーブルに変え、CATVセットボックスを4Kチューナー付きに変えた。ところが普通の地上波、BSテレビの画質が今までより落ちてしまったので、ケーブルテレビ会社に点検してもらった。
 同軸ケーブルから光ケーブルに変えたことで理論的に画質が劣ることはないとのこと。光ケーブルの電波の状況も問題がない。今までの同軸ケーブルはすでに撤去してあるので、実際に旧画質を再現することは難しい。
 チューナーに関しては、新しくしたセットボックスのチューナーはテレビのチューナーに比べて人の顔の輪郭とか水面の光の光度とかの画像が劣るのが私の目では歴然としているのだが、ケーブルテレビ会社の人は違いが分からないという。結局セットボックスのHDMIのRGB出力レンジをスタンダードからエンハンストに調整して様子を見ることに落ち着いた。
 画質の優劣判定はむずかしい。こちらの不満や言い分を時間をかけて聞いてもらったことが納得して引き下がった理由として大きいかも知れない。
 
 
 春の水うまさうに飲む鸚哥かな
 
 
 
 

2019年5月8日(水)
日限り日記

 [モダンジャス]
 昔よく聴いたモダンジャズのなかでCD化されたMILES DAVIS SIXTETのBAGS GLOOVE、ART PEPPER QUARTETのMODERN ART、TOMMY FLANAGAN TRIO のTHE STANDARDなどを買ってきて聴いてみたが悪くない。演奏も良いし自分の昔がよみがえってくるのもいい。
 それではというので20枚ぐらいあるジャズのレコードをデシタル化してCDにしたりパソコンに入れたりする方策を研究して目鼻がついたと思った。
 ところがレコードをレコードプレーヤーにかけて試聴してみたが、肝心のプレーヤーが全く使い物にならなかった。回転が不安定だったり針も黴ついていたりしているようだ。針を交換しようとしたが品番の登録がない。
 最近のプレーヤにはUSB端子がついていてUSBメモリーにレコードを自動的にデジタル録音することが出来るらしいが、さりとて20枚のレコードのために新しくレコードプレーヤーを買う必要があるのか。レコードの方も黴ついていて音が出ないかも知れないし。
 この計画は当分保留としよう。
 
  モダンジャズ黴の音出すプレーヤー
  
  
  
 

2019年5月6日(月)
日限り日記

 [象徴天皇]
 天皇の退位と即位が滞りなく行われた。
 天皇は終身在位するのが当たり前と考えられていたから、天皇が退位したいという「おことば」を直接表明されたとき、有識者の間には疑問を呈する人も多かった。しかし、国民の90%がこれを支持することがわかってから、風向きが変わった。
 国民の90%がこれを支持するということは何なのだろう。
 天皇の言われた内容に共感をもったのか。それとも天皇の言われることはどんなことでも正しいと言うことなのか。
 日本はつくづく天皇が特別の力を持つ「天皇教」の国だと思う。力の源泉は、歴史(万世一系)や文化(神道の祭主)もあるだろうが、命、礼、言、徳、仁など君子たる者の道を究めようとする天皇の努力もあったと思う。
 そのための準備期間である皇太子時代のことを思うと、令和天皇は先代すめらみこに互してあるいはそれ以上に研鑽を積まれ慎み深くあったと思う。今後に対して何の心配も抱くことはない。むしろ、上皇という日本では二頭政治の悪しき歴史のある役割に着かれた先代の今後について心配する。表に出てはいけないが、さりとて象徴天皇の役割を終えて私的生活を楽しむという面が強く出れば天皇は一職業であったことになってしまう。象徴天皇の退位後のあり方は難しいとは思うが、退かずに摂政を置くか退いて上皇に就くかご自身が選ばれた道である。天皇制が穏やかに続くためにマスコミは上皇の動向を極力取り上げないでほしいと思う。
 
 父すめらみこ子すめらみこ五月風
 
 
 
 
 

2019年5月3日(金)
日限り日記

 [中国語で名前を読む]
 孫が大学に入り第二語学に中国語を選択した。おじいちゃんの力を見せつけるときが来たと思ったが実は最初から挫折した。
 それは自分の姓名を中国語で言う宿題が出たと言うので相談を受けときだった。氏名の中に中国語では滅多に使わない字がある。「瀬」「乃」である。字引を引いても発音の仕方やどういう例示をしたら良いかが分からない。やむなく私の中国語の先生のお世話になった。
 「瀬」はlai4。瀬戸内海の瀬。「乃」はnai3。おばあちゃん「女乃女乃」nainaiから女偏をとった乃。
 言われてみればとても分かりやすい説明だが思いつかなかった。
 
 ところで万葉集の最後の歌は大伴家持の
 
   (あらた)しき 年の初めの 初春の 今日降る雪の いやしけ吉事(よごと)
 
 であるが、原文(万葉仮名)は
 
   (あらたしき)(とし)()(はじめ)乃波都波流能家布敷由伎能伊夜之家餘其騰 (のはつはるのけふふるゆきのいやしけよごと)
 である。「の」に「乃」「能」が使われている。「能」は音字、「乃」は訓字であろうが使い分けている。
 大和言葉的に言えば、「乃」は万葉集最後の歌の「年乃始乃」の「乃」です、ということになろうか。
 
 
   初蝶や源遠き飛鳥川