2018年11月29日(木)
日限り日記

 [北窓を塞ぐ]
 サッシュ屋来る。防寒のため北側の窓ガラスの二重化。
 風呂と洗面所を二重ガラスにするには、今まであったブラインドが付けられない。曇りガラスが二重になるので外部から見えなくなるという説明だったが、実際に出来上がってみると外部から中の人影が見える。
 どうするか考えていたところ二重ガラスの内側にカーテンを下ろせば良いのではないかと思いつき、実験してみたとこと妻のOKが出た。
 早速材料を仕入れに東急ハンズに行ったがカーテンの材料は置かなくなったとのこと。見ると生地や日曜大工の材料などはなくなって、若い女性の好みそうなきれいな出来上がりの装飾品が多い。
 店は生き残りをかけて試行錯誤をしている。
 工事の方はサッシュメーカーから一部の材料が間違って届いたので工事ができないとのこと。聞いて見ると考えられないミスである。一部の作業が別の日になることになった。
 
 
  北窓を塞ぐ猫奴も逝きけるに
  
  
  
 

2018年11月26日(月)

 [紅型染め具」
 一億人の俳句入門出席。
 新宿高野でサンドイッチ。
 ブックファーストで気になった本は「日英語表現辞典 」(ちくま学芸文庫 最所フミ)。このような本が中国語にあればうれしいのだがと思う。
 小説では賈平凹の「老生」の翻訳の解説を見ていたら、また読み続けたくなった。「老生」は第一章で止まっている。そこに出て来る古「山海経」が難しいせいもあるが、中国語の先生につかなくなった時期と重なったためでもある。
 読まなくてはならない原書の手持ちが二三冊あるが、「老生」も候補に挙げておこう。
 「一億人の俳句入門」では珍しく二句とも特選になった。一つは義母が亡くなった喪中の欠礼状に書こうとしている「遺されし紅型染め具年の暮」で、これでよしとなったのですぐ欠礼状を出せることになった。「染め具」は「染め筆」がいいかなと思ったが、紅型染めは型・筆・染料顔料などの染め具に特徴がある。欠礼状に句を添えるのはあまり見ないが、句によって身内として義母を敬い悼む気持ちが出せれば良いと思う。

 

 残されし紅型染め具年の暮
 
   
 
 
 

2018年11月23日(金)
日限り日記

 [猫と鳥]」
 妻の買ってきた「玲子さんののんびり老い支度」を拾い読みする。
 著者の西村玲子さんはイラストレーター・エッセイストとあるだけあって、内容も面白いがファッションのイラストがとても良い。美しい。男ではあるがファッションに無頓着にはなりたくない。
 猫と鳥の話が載っていた。猫を亡くした著者が寂しいだろうと息子がキンカチョウの雛を育ててくれた。その鳥がふとした拍子に鳥かごから外に飛んで行ってしまった。しかし随分遠くまで飛んでいったのに声を限りに鳥の名前を呼んだら、一目散に戻ってきて手の中に入ったとのこと。
 我が家も猫をなくしてから8ヶ月たっているのに未だに猫のいなくなった淋しさから立ち直っていない。かといって猫を飼い直すには年をとりすぎていて我々がいなくなったあとが心配だから飼うことができない。鳥ならどうだろうという話しはしているが、この西村さんの話しで少し心が動かされた。
 
 枯葎(かれむぐら)ふと亡き猫の声したる
 
 
 
 
 

2018年11月20日(火)
日限り日記

 [高品質・高モラル国家]
   「・・・・このたびは(パンツの)サイズを間違えてお送りし申し訳ありませんでした。今後はこのようなことがないよう気をつけて参ります。・・・・」
 「この度はお買い上げいただいたジャケットの件(約束した名前を入れなかったこと)で大変ご迷惑ご不快な思いをおかけ致しましたこと心より深くお詫び申し上げます。今後はこのようなことのないよう十分注意徹底していく所存です。・・・・・・」
 この手紙は、別の日に違うデパートからもらった手紙である。パンツのウエストを間違えて送ってきたり、ジャケットに名前を入れる契約でありながら入れなかったり、日本を代表するデパートがやるミストは思えないことが続けて起こった。
 最近は、自動車会社で最終検査工程の手抜きがあったり、素材メーカーで規格を下回る製品を規格に合格していると偽って納品したり、耐震ダンパーの強度の偽装があったり、メーカーのモラルも地に落ちたと思わせる情けない事態が続いた。
 サービス産業でも旅行会社や晴れ着会社の詐欺まがいの事件など日常のように起こっている。
 日本全体がかつての高品質国家、高いモラルのある国家ではなくなっている。
 日本は、江戸末期以来欧米に追い付くために官民挙げて頑張ってきた。追い付いたと自覚した途端増長して傲慢になった(日本人の国民性は「追随と増長」(窪田城「歴史の創る国民性」)。いまのありさまは傲慢になった国民のもたらしたものである。
 私が現役であったころ、1960年から2010年にかけての50年間ぐらいのうちの一時期は高品質国家、高モラル国家であったと思っていたが所詮はあだ花であったか。そんなものは幻想に過ぎず実際にはなかったのか。
 
 夜長かなしばしは宇治の大納言
 
 
 
 

2018年11月18日(日)
日限り日記

 [人生100年]
 年に一度の会社の同期会が開かれた。最近人生100年と言われるが、我々も100年を目指して頑張ろうという威勢の良い乾杯の挨拶で始まった。しかし皆の近況報告ではまあせいぜい東京オリンピックまで生きられるかだなあという弱気の発言が多かった。
 平成28年度の調査では、男子の平均寿命は80.98才。85才の人の平均余命は6.27才。しかし日常生活に制限のある「不健康期間」は8.84才。生きても不健康ではつらい。現実に体に不安材料を抱えていることが弱気の発言の基になっているように思う。
 ところで人生100年時代にどうして生きたら良いのだろうか。過去の郷愁で生きれば良いというのが五木寛之だ。それは決して消極的な生き方でなくて過去を振り返ることによりもう一つの人生を生きることができるはずだと五木は言っている。しかしやはり消極的な感じは拭い去れない。
 違う考えは例えばマハトマ・ガンジー。永遠に生きると思って学びなさいと言っている。しかしこれも何を学ぶかによるのではないか。私のやっているような下手な俳句づくりや語学の勉強が「学ぶ」になるのか。長谷川櫂は、老人と言えども俳句の革新に取り組んで欲しいと言っている。こうなると「学ぶ」ことも簡単ではなくなる。
 一番高級な生き方は、他人の役に立つことをやるということであろう。私のキャリアから言えば経営関係の資格をとって無料相談に乗ってあげるというのが一番向いているような気がしたが、新しく資格を取るのは大変そうで到底その道は選べなかった。肉体的なボランティア活動は体力から言って無理だった。
 結局生まれついた資質のなかで残りの人生を生きることしかできない。自分の資質は何なのかを見つめて、それに正直に生きるのが心地よいはずだ。
 
  冬に入る音の澄みゆく日なりけり
 
 
 
 

2018年11月15日(木)
日限り日記

 [今年の紅葉]
 四季の森公園で「今楽しめる里山の紅葉」散策会。
 赤く紅葉する木:モミジ類、ヌルデ、サクラ、ニシキギ、ウルシ類
 黄色に黄葉する木:イチョウ、カツラ、ユリの木、ヒメコウゾ、ムラサキシキブ
 褐色になる木:クヌギ、コナラ、ケヤキ、柏
 などを見て回った。気温が10度以下にならないと紅葉しないが今年はまだ暖かいこと、今年は特に台風の塩害が内陸にまで影響して、紅葉がきれいでないとのことだった。
 私たちが参加したのは「四季の森里山研究会」であるが、途中でいくつか別の団体にもすれ違った。自然観察は今老人の間で流行であるのか。
 
 5年ほど前京都日帰りで紅葉を見に行く計画を立てた。京都に詳しい人にも聞いて、東山の銀閣寺、安楽寺、真如堂、金戒光明寺、永観堂、南禅寺、清水寺を時間の許す範囲で歩く計画に絞った。しかしじきに女友達の態度から、提案しても断られるという感じが読み取れたので、言い出さなかった。私にしても紅葉狩りと言うよりは「哲学の道」のどのあたりで手を握ってなどと考えていたので、断られるのは気持ちを見透かされるような気がしたのだ。
 
 白川の流れは清し紅葉道
 
 
 
 

2018年11月12日(月)
日限り日記

 [西施(セイシ)のことなど」
 中国語個人レッスンに先がけてカフェ・ド・クリエで食事。ここは場所が変わって今は帷子川沿いにある。川を見ながら食事が出来る。
 今日は個人レッスン再開後3回目で閻連科の「東南に向かって」の一回目。
 半分以上は、漫画「東周英雄伝」の話をした。私が紹介したこの本が、今学院で教科書として採用されようとしている由。24人の英雄のなかに西施の名前があるが、西施が果たして英雄かという話になった。私としては西施こそが英雄だと思う。呉王の夫差(フサ)を籠絡するため遣わされた絶世の美女西施は成功して越に帰国したが、息子越王勾践(コウセン)が西施との色恋に溺れるのを怖れた越王の母によって海に沈められたということになっている。私としては西施を呉に遣わした越国の高官范蠡(ハンレイ)と故郷で仲良く暮らしたという説を信じたい、などと話した。
 あとは読了した「堅硬如水」「朝着東南走」の中国での書評を読んだ。日本の書評も同じだが書評子は易しいことを難しく言うから分かりにくい。先生との中国語の会話は面白かった。
 高島屋で金曜限定の日光鬼平の水羊羹を買う。新しいパソコンを見ようと思ったが疲れてとても回れなかった。
 

 楽しげな西施范蠡月の道
 
 
 
 

2018年11月10日(土)
日限り日記

 「堅きこと水のごとし」
 「堅硬如水」(日本語名「硬きこと水のごとし」)(閻連科)を読了。
 2018年4月に始めて6月に中断。10月に始めて11月6日読了。
 帯に「革命+愛情」「文革+情欲」の形象小説とある。
 著者の自解によれば
  『硬きこと水のごとし』の物語は荒唐無稽で、狂気に満ちています。狂気に満ちた「赤色言語」「革命用語」で語らなければ、物語の意義は半減してしまうでしょう。もし、このような言語を使用しなければ、『硬きこと水のごとし』に残されるのは、獣のような男女の姦通だけです。それでは意味がありません。この一連の言語がまさに、物語を豊かにし、小説の意義を高めているのです。
     (張学昕との対話録、『我的現実、我的主義』、中国人民大学出版社、11年)
 このような様式は、長い文学の歴史を持つ中国の特質かも知れない。具体例としては賈平凹の「老生」が「山海経」を援用しているのもそうである。莫言の「蛙」は劇作家としての莫言が自作した劇の台詞を小説に取り入れていた。これは成功したとは思えなかったが。
 「堅硬如水」のストーリーは簡単である。地区の革命幹部の男女が不倫をする。妨害に会わないためにお互いの家に通じるトンネルを掘って思う存分逢瀬を楽しむ。自分たちに不利な障害を強引に乗り越えて出世街道を進むが、最後に落とし穴があった。それは彼らの出世を決めるキーマンである地区の委員長が、毛沢東の夫人江青と良い中でありその写真が彼らが見たあと行方不明になったことで、彼らの口を永遠に封じる必要がでてきたことである。
  文革の不合理さをさらけ出した小説とも言えるが、むしろ厳しい環境にあればあるだけ男女の情欲が激しいということを描き出した小説と言える。私が読んだなかではいまのところ「炸裂志」「我与父輩」をもって閻連科の代表作とするが、いま手元に未読の「受活」(日本語名「愉楽」)がある。


立冬やあんこが好きで太りぎみ

 
 
 
 

2018年11月7日(水)
日限り日記

 [日本語びいき(清水由美)を読む]
 著者は日本で外国人に日本語を教えている人。
 いままでの学者の日本語文法とちがって外国人の目から見た日本語の特徴が浮き彫りにされている活き活きした文法書といえる。
 例えば「浜辺で踊る」「縁側で・に寝る」「いすに座る」では助詞が「で」「に」と異なるのはなぜか。直前の動詞が元気いっぱい動いているか(踊る、飲む、歌う)静かな動きか(座る、休む、寝る)かの違いによる。「・・・している」も元気のある動詞に付くと(踊っている)いましている最中になるが、元気のない動詞に付くと(太っている)太ったあとの状態を表す。
 というように動詞によって助詞が変わり進行形の意味が異なってくる。
 このように、日本語は難しいがそれは別に日本語に限ったことではない。外国語に比べて特に難しいわけではないと著者は言っている。
 このほかいくつかの例を示して日本語の特徴を日本人に知らしめる本にもなっている。
 
 同じようなこと(中国語は曖昧で難しいか)を中国語の文法書で見たことがある。
 
 中国語の「動詞+目的語」を見てみる(謎解き中国語文法 相原茂)。
 1.目的語が受け手  釣魚(魚を釣る)
   2.目的語が結果   編字典(字典を編む)
   3.目的語が対象   接待外国朋友(外国の友人を接待する)
   4.目的語が道具   看望遠鏡(望遠鏡で見る)
   5.目的語が方式   唱A調(A調で歌う)
   6.目的語が場所   A.終点目的語  去北京(北京に行く)
              B.定点目的語  教中学(中学で教える)
              C.起点目的語  下車(車を降りる)
              D.移動目的語  走小道(小道を行く
   7.目的語が目的   考研究生(大学院を受ける)
   8.目的語が原因   養病(病気の療養をする)
   9.目的語が受け身  熱菜(料理を温める)
   10.目的語が主体   開始新年(新しいが始まった)
   11.目的語は同族   唱歌(うたを歌う)
   12.目的語は同等   他担任班長(彼は班長だ
   13.目的語は虚指   看甚嘛(何を看るか)
   14.その他        上年紀(年をくう)
   
   中国語は助詞がないだけに動詞+名詞の単語の選択が重要だ。
   結局、どの外国語でもどの単語にはどの単語が結びつきやすいかを体得するしかない。文法書だけでもやがては本を読むことは出来るようになるが、現地人のように話したり文章を作ったりするのは、私の15年の経験では不可能に近い。相撲部屋のように言葉の海に放り込まれるようなトレーニングをしないとおそらく出来ない。
 これはどの国の言葉でも同じだろう。
 
 
 立冬の空一面に残る秋
 
 
 
 

2018年11月5日(月)
日限り日記

 [百年を生きる心臓]
 天野篤「100年を生きる 心臓との付き合い方」を読む。実利的な教訓をいくつか。
1. 男子の平均寿命は80.98才。85才の人の平均余命は6.27才。不健康期間は8.84才
2. 血液造影剤は腎機能を悪化させるケースあり
3. 適度の運動が必要。駅では出口に遠いところで降りる、人を避けながら歩くのも体を鍛える訓練になる
4. LDHコレステロールは60~119mg/dl。スタチンは有効。筋肉痛が出たら中断して再開する
5. 朝6:00~8:00,夜20:00~22:00は心臓にとって危険時間
6. 風呂はシャワーで暖める
7. インフルエンザは心臓に極めて悪い影響を与える
8. 心臓に悪いもの:寒い朝、重いものを持つ、階段の上下、洗濯で水に濡れる、大掃除、脱水状態、ストレス、トイレのいきみなど
9. 心臓に悪い姿勢:前屈み、しゃがむ姿勢
10. セカンドオピニオンは違う科目の医者へ(心臓内科*心臓外科)
 
  洪水はここまで小菊咲きにけり
 
 
 
 

2018年11月3日(土)
日限り日記

 [名人伝]
 中島敦の「名人伝」は趙の邯鄲に住む紀昌の物語である。彼は天下第一の弓の名人になろうという志を立てた。以降先生の教えに従って瞬きをしないことを究めて、睫毛の間に蜘蛛の巣を作らせたり虱の心臓を貫いたりするようになった。また一箭たちまち五羽の大鳥を落としたりできるようになった。やがて修行を積んで帰郷した後は射のことを口にすることはなく煙のように静かに世を去った。
 さて10月18日の日経に依れば「サバイバルボディ」(スコット・カーニー)という本が出たそうだ。これは全裸に近い男が氷面に座るのを見た男(スコット)が、本人を訪ねてやがて弟子入りをし、とうとうパンツだけの姿でキリマンジャロの登頂を果たすのを書いた本である。「ストレス反応を鍛えることで」過酷な環境に対する制御法を身につけたとある。
 じつは私は突発性心房細動という不整脈がある。基本的には心臓の老化が原因であるが、突発的に起こるもので予測がつかない。不思議なことに3日をおかず発症することがあるかと思えば、6ヶ月間まったく発症しないこともある。20年間のデータをつけているのだが何故発生の頻度が異なるのか解析できない。
 医者は発症の予測も出来ないし、過労、睡眠、アルコール過多に注意し一般的な老化防止策を講じる以外に発症を予防する方法はないという。民間療法の本によると、ヨガ、呼吸法、左の肩甲骨周辺の筋肉を鍛える、脹ら脛の筋肉を鍛える方法などが書かれている。
 実は私はストレス制御がうまくできれば発症をコントロール出来るのではないかとひそかに思うようになっている。呼吸法やマインドフルネスなどもその一つだろう。どういうストレス制御法が有効か、いま身を以て研究しようとしているところだ(いまのところどうやって研究しようか目算が立っていないが)。
 紀昌やスコットの域に達しようとすれば不整脈で死ぬ前に過剰鍛錬で死んでしまうだろうが。
 
 志のかたち残れり昼の月
 
 
 

2018年11月1日(木)
日限り日記

 [猫追想]
 我が家は40年以上前に建てたのだが当時は建物の強度は問題になっていなかったので気にしないで、思い切って窓や戸口の開口部を大きく取った。
 もちろん二重ガラスはない時代だった。今となっては地震が心配だし、冬は日が落ちると窓からの冷えがひどいように思う。
 寒さを防ぐために最近簡単に窓を二重にする方法が開発されたと聞いたので、サッシュ会社のショールームを見に行った。なるほどいまの窓を生かしながら内側から新しい窓をはめ込むとか、いまの窓を毀さないで窓全体を二重窓にしてしまうとか、サッシュはいまのままガラスを二重にするとか、窓枠をアルミニウムからプラスチック製にするとかいろいろな方法が開発されていた。
 ショールームで実例を見て回ったときのこと。妻があらっと立ち止まったので視線を追うと茶トラの猫がいた、というか猫の写真があった。それが我が家の第一代の猫、14年前23才で死んだパーコと瓜二つの猫だった。
 われわれは息が詰まる思いでしばらく猫に見入ってしまった。抱けばほわっと暖かかったその猫の温もりが戻ってきた。
 
 
 あひよりて十一月の皮下脂肪