[「罪の終わり」を読んで]
2152年7月、ビア・ヘイレンはアラバマ川のほとりからニューヨークまでヒッチハイクを敢行した。途中トラック運転手に犯されて、双子の男の子を産む。そのうちの一人ナサニエル・ヘイレンは万能のVB眼を入れた。
2167年6月アメリカは小惑星の衝突により文明を失った。多くの人びとが餓え、一部で食人行為が正当化された。
というような背景の小説だから、SF小説まがいである。SF小説が嫌いな私がなぜこのような小説を読んだかと言えば、作者が「流」の東山彰良だからだ。
主人公のナサニエルは整った目鼻立ちの優男で母親を殺したりもするが、障害のある双子の兄のウディをこの上なく守る。
彼の命を狙う影との戦い。ナサニエルは生まれながらの英雄だったわけではなく、誤解や偶然が積み重なって、本人の意思とは関係なく神格化されてゆく。彼はやがて彼の信奉者を引き連れて、エル・モヘルへたどり着く。
筋書きとは別に、部分部分では東山彰良らしい、歯切れのよい活劇があって、楽しめた。
これを機に彼の今までの作品を眺めて見ると、実に多岐にわたっていることを知った。とりあえず次回読む候補として、今度はずっと易しそうな「さよなら的レボリューション」を仕入れてきた。
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